(ハンターハンター ©冨樫義博/集英社)
こんにちは、サチヲです。

始めは ただ欲しかった人で有名なカリスマ変態サラサラヘアー、クロロ・ルシルフル。
今となっては既に『過去編』が掲載され、団員の生い立ちが明らかになったのですが、この95話が掲載されたジャンプは2000年40号です。
目的や思想、クロロ含め全員の立ち居振る舞いや性格がまだ明確に分からない状態だったので、私としては“かなり前のめり”になって読んでいました。

あの!冷酷無比なオラつき集団『幻影旅団』の頭であるクロロの喋り方や性格が分かる…と言っても“外面”でしかないですが、それでも貴重なエピソードの部類に入るでしょう。
なんせバンダイのガチャガチャの景品にもなっている、大人気の『天使の自動筆記(ラブリーゴーストライター)』の初出のタイミングでもあるのですが…今回は、ネオンの“それ”を引き出し、盗むために駆使した『陽キャのコミュニケーション能力』が団員の中でもずば抜けて高いので見てみましょう。

【ハンターハンター】『コミュニケーションお化け』 | クロロ・ルシルフルの陽キャっぷりが凄すぎる!距離の詰め方がプロ!

(ハンターハンター ©冨樫義博/集英社)

先ず!右上のコマに、前歯がない初めて出てきたキャラクターが出てきました。あなたは覚えていますか?
彼曰く…「私は あちらに いますんで」と言ったおじさん。あれ?この人どこから湧いて出来たのでしょうか。唯一の情報とし、コマの枠外に『公園でスカウトしたダンボールに住む人』とありました…ん?あーーー!ネオンを乗せた車の運転手だったのか!!ですよ。
こちらがその前のコマ。

(ハンターハンター ©冨樫義博/集英社)

「OKです」のコマで、笑顔で運転席から身を乗り出している人がそうなのです!
こんなの最初は読み飛ばします…というか、集中力の無い私に至っては気がつくはずありません。
ただ、何度も何度も読みかえして…「あぁーーーッ!」となるのです。

これも全て、ネオンを騙すために“運転手付きの人”というだけで『拍がつく』ことを狙って公園でスカウトしてきましたよね。
ちなみに金輪際もう出ることはありません。

そして!この距離の詰め方をご覧ください。この3コマが非常に重要なコマでもあるのです!!

(ハンターハンター ©冨樫義博/集英社)

クロロ「どのくらい当たるの?占い」の時は、相手のゾーンに入らない適正な距離で話しています。しかも倒置法まで使って。
この距離で“相手の興味関心のある話題をふる”のです。
だからネオンは「百発百中なんだって」という、屈託のない笑顔で対応しているのです。
ネオンにとって『占い』は圧迫面接のように利害が成り立った上での会話だったのに、クロロは純粋に『占い』に興味を示した聞き方をしているのです。あの無垢な笑顔をしながら!

で、重要な2コマ目!
クロロ「なんだってって…君が占っているんでしょ?」の質問は、スキルハンターの制約の一つである『相手に念に対して質問し、相手がそれに答える』をクリアしながらも、お近づきになっているのです!もうコミュ力があり過ぎです。

更に3コマ目で、クロロ「へぇーすごいね!オレも占ってよ」という熱のこもった質問だけれども…「占ってよ」には『!マーク』は付けずに、あくまで“言葉(質問)の圧を持たせずに物理的な距離を近づける”ことをしているのです。
多分、ネオンは“こんな簡単に”ラブリーゴーストライターの念能力を使わないはずです。というか、使うのを止められているはずなのです。
そんな警戒されたネオンの念能力を、もう一つの制約の一つ『相手の能力を見る』をいとも簡単に自然に使わせることが出来たのも、クロロのコミュ力の高さがあってのことなのです!!

何が凄いのかって、当時は“まだクロロの念能力の制約が知らされてない状態”なのに…たったこの3コマで、自然に2つの制約をクリアしているのですよ。
そう!実はコレ…念能力者同士の戦いが繰り広げられていたのですッ!!!!!全く気がつかないですよ。こんなの。

冨樫め…やってくれましたね。

改めて。
カリスマ変態サラサラヘアー・クロロの念能力『盗賊の極意(スキルハンター)』で相の念能力を盗む条件は…

  1. 相手の念能力を実際に見る。
  2. 相手に対象念能力について質問し、相手がそれに答える。
  3. 本の表紙の手形と相手の手のひらを合わせる。
  4. 1~3までを1時間以内に行う。

先ほどの3コマで冨樫は意図的に3番目の『本の表紙の手形と相手の手のひらを合わせる』だけ描写していないのです。
4番目については1時間以内に“もちろん”行っているでしょう。

(ハンターハンター ©冨樫義博/集英社)

今まで和気あいあいとネオンと話していたのに、クロロがネオンの『天使の自動書記(ラブリーゴーストライター)』を出した瞬間…この鋭い眼差しになるのです。ほらー!めちゃくちゃ見てますよ!!
当時私め、「クロロはやっぱりカッケェーな!」としか思ってなかったのに、実は1番目の『相手の念能力を実際に見る』の条件を満たした瞬間だったなんて…分かるはずないですよね!?

まるで冨樫が「念能力者同士の戦いは、あーいうのだけではなく、こーいうのもあるんだよ。えへへ」と可愛さアピールしているようじゃぁ~ないですか!?
だから私め、冨樫のことが大好きなのですよ。

最後に

クロロのキャラ設定の話ですが、この時はまだ…この陽キャが作られた『外側の性格』であり、コアである凶暴性と冷酷さを隠していたのかと思っていたら…実は!外側の性格だと思っていたのが本来のコアな部分だったのです!まさかあの清掃戦隊カタズケンジャーの吹き替えをやっていた子が…ですよね。
これは過去編が24年後に本誌に掲載されたから分かっていますが、当時からその設定を意識した会話劇をしている冨樫に感服いたします。

だから、ハンタは何度読んでも“味がする”のです。
ではまた。