(ハンターハンター ©冨樫義博/集英社)
こんにちは、サチヲです。

私たちは“それ”に慣れてしまっているのかもしれませんが…そもそもハンタの世界では、人間離れした変態(常人では決してできない事を平然とやる人に対して私史上の最上級の誉め言葉)が多すぎるんですよ。
実は手足の一部と鼻を失っている、未成熟な果実(主にゴン)を育てるのが大好き変態・ヒソカ。
動機の言語化あまり好きじゃない、情緒不安定カリスマ変態・クロロ。
度を越した単純一途まっしぐらの、狂人変態主人公・ゴン。
こんな変態たちがひしめき合っている中、ほんの少しでも人間的な弱さ、不安定さ、矛盾を丁寧に描くのが変態天才マンガ家・冨樫なのです。

【ハンターハンター】『冨樫の真骨頂・目で語る』 | クラピカ最大の魅力『あふれる人間味』を持ち合わしているからこそ…愛されるキャラのひとりに成るのです!!

(ハンターハンター ©冨樫義博/集英社)

大前提として、クラピカには“仲間をもう…危険な目に合わせたくない”という思いがあります。
今回のお話は、この大前提があると仮定して進めていきます。
自死すらを制約に込めた『鎖』で寿命を減らしながらウボォーさんと戦い、旅団の強さを肌で知っているクラピカからしたら、ゴンとキルアが「っていうか旅団に捕まっちゃたんだけど」なんて聞いたら…こうなりますよね。

  • クラピカ「何を考えているんだお前達は!! 相手がどれだけ危険な連中かわかってるのか!!」

となりますよね。
先ず、ココが“人間味ポイント1”である『ズレた人を見ると我慢ができない』でございます。
地頭が良く状況判断と比較検討の精度が高すぎるので、すっとぼけた人に対してノータイムでイライラするのです。
あなたの職場にもいませんか?特に過去の栄光(令和では通用しない)を振りかざす、正義は自分上司。そっと崇め奉りましょう。

そんなクラピカに「“取引き”で嘘つくほど俗呆けしてねーよ」で有名なキルアが対抗します。

(ハンターハンター ©冨樫義博/集英社)

いやー、懐かしい一コマですよね。
さすが!としか言えない、ゾルディック家で鍛えられた交渉術『理(物事の筋道や道理、原理、法則)には利(利益、利便、役に立つこと、都合が良いこと)』を発動させるのです。

(ハンターハンター ©冨樫義博/集英社)

さすがにゴンには出来ないであろう…“クラピカの協力がいる”という最初に『目的』を明確に相手に伝えることをして、クラピカに支払った対価(利)が“オレ達も力になりたい”である。
だがしかし、ゴンとキルアの意図が分かった瞬間のクラピカの目がこうである。

(ハンターハンター ©冨樫義博/集英社)

はい、もうイライラしてるぅー!キルアの原理原則に則った話の進め方が、逆に戦闘態勢に入られてしまったのです。
キルアは、クラピカのスイッチを押したことも露知らず…返り討ちに合います。
ここからは、キルアとクラピカの戦いを見ていきましょう。

  • キルア「オレ達も力になりたい」
    目的を“オレ達だけが利がある”のではない“寄り添う”感じの目的にしたのはクラピカの性格(押せば寄り添ってくれる案外チョロい)を知ってのことでしょう。
  • クラピカ「ふざけるな お前達の自殺行為に手を貸す気はない」
    こんなに寄り添った提案をしている相手に対し最初の一言が“ふざけるな”と一蹴する…ガンギマリの目になったクラピカには通用しません。
  • キルア「奴等のアジト……知りたくない?」
    ⇒“アジト……”で、ちゃんとタイミングと強弱をつけたキルアの言い方がいい!キルア自身も“こちらはまだまだ情報があるぜ”という主導権を握ろうとしている努力がかわいい!
  • クラピカ「……」「情報提供者はちゃんといる」
    ⇒ナッ!?オマエッ!そんな事も知っているのか!!という怒りが、最初の「……」という沈黙でにじみ出ているのです。
  • キルア「団員の能力についても わかったことがある」
    ⇒この提案を最初に出さないで、このタイミングで出すのが素晴らしすぎる。
  • クラピカ「くどい! いいから旅団から手を引くんだ」
    ⇒もはや…“面倒なことをするな!もしくは“私の邪魔をするな!”って感じですよね。この後キルアが“むーー”って怒りをあらわにするのもいい!
  • キルア「奴等の1人を倒した鎖野郎ってクラピカだろ?」「あいつら血眼で探しているよ」
    ⇒最終強力カードである“オレ達ここまで知ってんだぜ”が出ました。
  • クラピカ「……」
    ⇒そりゃこちらも出します。言っても聞かない人にたいして発動する『沈黙』。まぁただの無視ですが…

この一連の交渉会話でこぼれ落ちた、クラピカの“人間味ポイント2&3”である『負けず嫌い』&『頑固』を見ることができるのです。
特に!クラピカの会話は“常に上から目線”で話すし、進め方も“常に自分が主導権を持っている”状態でいるのが好きなのです。
実は、この会話で更に分かることがあるのです。

ブログのアイキャッチ画像をもう一度見てください。

(ハンターハンター ©冨樫義博/集英社)

そもそもこのやり取りは、キルアから「ちょっと待って じゃ1分だけ!!用件だけ言うから」という提案からスタート。
対してクラピカが「それなら聞かねばよかろうに…」という提案を受理したところから始まっていることとを!!
あれ…さっき会話は1分なんてとっくに過ぎてますよね。
そう。これが“人間味ポイント4”である『クラピカはチョロい』のです。
良い言い方をすれば『優しい』のですが、『チョロい』を別の言い方をすると『煽り耐性ゼロ』という所に行きつくのです。
これこそ人間味あふれる愛すべきクラピカですよね!?

結果!キルアの冷静さを崩して交渉決裂になるのです!

(ハンターハンター ©冨樫義博/集英社)

今回はキルアの完敗です。
ただ!キルアに出来ないことをやるのがゴンなのです。
最初に私が「さすがにゴンには出来ないであろう…」と言いましたが、順番が大切なのです。
キルアがここまでクラピカを追い詰めたからこそ生まれた『急に優しい刑事が出てきた感』を出したゴンの揺さぶりトークが発動するのですよ。

(ハンターハンター ©冨樫義博/集英社)

ゴン「無性にやるせなくて」「許せなかった」
このセリフに、クラピカはグッと来てしまったのです。
ニュアンスはもちろん違うが“許せない”のはクラピカも一緒。

ここで“やっと”出るのです。冨樫の『冨樫の真骨頂・目で語る』がッ!!

(ハンターハンター ©冨樫義博/集英社)

キルアが押してはならないクラピカの『ガンギマリ目』のスイッチから一転…視線を落としてから出たセリフがこちら…

  • クラピカ「こちらから」「かけ直す」

見事に、クラピカから最大の譲歩をゴンとキルアの二人の共同作業によって引き出されたのです。
ここでクラピカの大前提にも繋がる“人間味ポイント5”があるのです。
それが仲間をもう失いたくない”という出発点から生まれた『クラピカの生きざま全て』に人間味が現れているのです。

そもそもクルタ族を大量虐殺されてから、文字通り“天涯孤独”で渡り合ってきたからこそ…なのです。
クラピカの名言の一つである「死は全く怖くない。一番恐れるのはこの怒りがやがて風化してしまわないかということだ」とあるように、常に臨戦態勢でギリギリの精神状態を維持してきたクラピカ。
その呪縛とも言える『クラピカの決意』を、理解し共に居てくれるゴン、キルア、レオリオに対して『仲間』として認定(し始めている)した大切で大事なエピソードでもあるのです。

最後に

  1. 『ズレた人を見ると我慢ができない』
  2. 『負けず嫌い』
  3. 『頑固』
  4. 『チョロい(煽り耐性ゼロ)』
  5. 『クラピカの生きざま全て』

以上が、変態ばかりいるハンタの世界で唯一ではありませんが、人間味あふれるクラピカが大好きです!というお話でした。
はぁ……冨樫よ、クラピカに対してどうやって死を描くのか。
震えて眠ります。

ではまた。