(ハンターハンター ©冨樫義博/集英社)
こんにちは、サチヲです。

『クロロvsゼノ・シルバ戦』に行く前に、もう一つだけ妄想させてくださいッ!!

多分ね…このコマたちを映像化したら音は入っていません。
無音の状態のまま、淡々と場面転換し…その動きだけで“ゼノが屋上から半径300mの円を使いながら下まで降りてきた”であろう動きを表現しているのです。
無音だからこそ「円はしんどい」と言わせておきながら、ゼノにとって“そのくらいの円は当たり前のこと”という『強さ』の演出と思えて仕方がないのです。
特に、円で追い詰め最後の扉を開けるところまで“特に大変さ”を一切描かない。
戦闘態勢中は『凝』を怠らないという、念能力者同士の戦いでは“当たり前”とされている行動を『円』でやってのけるゼノ

兎にも角にも、先ずは肝心要の1ページの前に『はじまりのコマ』を見てください。

【ハンターハンター】『映画を観ているような場面展開』 | 大切な戦いが始まるからこそ!…緩急をつけた演出をしている冨樫

(ハンターハンター ©冨樫義博/集英社)

前回書いた『ブログ(お膳立て)』からの続きのコマですが…カメラの遠近感と言いますか、構図の魅せ方が非常に美しいのです。
殺し屋さんたちとのミーティングを終えた後、部屋を出た2人の会話からスタートです。
早速、右上のゼノのアップから“一コマづつ”いきますね。

  • ゼノの「しかたない“円”を使うか」というセリフを、表情が読めるくらいカメラがゼノに寄ることで“しんどいという言葉は裏腹である”という演出。
  • ゼノの「屋上から始めて…」のセリフで一気にカメラを遠のけ、2人の後ろ姿を描くことにより“屋上に登っている”ことの演出。
    カメラを遠のけたことにより、シルバの「このビルだと100m近く…」という“ビルの広さ”も演出
  • ゼノの「やれやれ」のセリフと『無のコマ』を置くことにより“ちゃんとビルの屋上まで歩きで登る時間”を表現
    →映像系の表現である“無の長回し”により、沈黙の気まずさや時間経過を表す表現を冨樫はココでする

次のページで2人のスイッチが完全に入る描写と時間を表現

(ハンターハンター ©冨樫義博/集英社)
  • ゼノの「全くもって割りにあわん仕事じゃて」のセリフとオーラを表現することにより“屋上に着いて”ゼノは円を発動させ、シルバは念を練りながら“警戒を怠らない”ということを表現。
    更に!今まで遠巻きだったカメラを2人のアップに戻すことにより、また“ゼノはセリフとは裏腹に仕事を楽しんでいる姿”と、シルバの口角が少し上がった表情を描くことにより“殺るきマンマンの姿”という、2人の仕事(殺し)に対する『必ず達成させる自信』を最高潮に盛り上げることにより、私のワクワクも最高潮に達するのです。
(ハンターハンター ©冨樫義博/集英社)
  • なのに!今度は外からビル全体の絵を描く。これはゼノが“この大きさのビル全体を今!円を使って下に降りているんだよ”という事を、この引きの絵で表現。
    →ビルの外では銃声が鳴り喧騒を表しながら、ビルの中ではゼノとシルバが作品史上いちばん大きいであろう『念』を放出しながら、どこかにいるであろうクロロという“未知数の強者を探す”という異常な日を改めて表現
  • 次に、引きの絵から“このビルの中を移動している”という、まるで私のはやる気持ちを押さえつけるかのような“落ち着いた静かな絵”を1枚挟むことにより、気持ちの昂りを上下に揺さぶってくる冨樫。なにも“ずっと昂らせるだけが盛り上げ方ではない”という冨樫の声が聞こえてきそうな焦らせかたです。
(ハンターハンター ©冨樫義博/集英社)
  • クロロがいる部屋に到達したことをセリフを無しに“時間を表現したコマたちを重ねること”により、私に対しても「やっとクロロがいる部屋に辿り着いたのか…」と思わせてくれる。
    →それにしても…「ターゲット(クロロ)は十中八九ココにいるじゃろ」というゼノのセリフが聞こえてきそうなコマです。
  • 同じ構図のコマで2人を少しだけ歩かせて扉に手をかける絵。たった“これだけ”の行動にも時間経過を表現するコマを入れることにより、淡々とした“嵐の前の静けさ”を見事に表現するのです。冨樫は。

だって、次のページをめくってくださいよ。大きく1枚絵でコレですよ…。

(ハンターハンター ©冨樫義博/集英社)

いやー、それにしてもこの絵。もう笑ってしまうのは私だけでしょうか。
この猫背で“いかにも”ひ弱そうな佇まいをしているゼノなのに、手にはかなり力の入った感じがしますよね!?
逆にシルバは全く隠そうとしていない『強さ』を出す。
だってあなた…あなたが会社に行って上司の前に立った時に“あんなに手が背中の後ろまでムキッとしながら立つ”ことをしますか!?あんなに威嚇した立ち居振る舞いなんかしたら仕事が増えるだけですよ。

そして、クロロが結構遠いところにいますよね。
もうコレだけで“十分に広いエリアでの戦い”が見れるってことですよね。まぁ外での戦いに比べたら制限はあるにしろ、この部屋で『ウボォーさんvsクラピカ』を凌ぐ(私の中で)戦いが繰り広げられるのですよッ!!

ここまで徹底して、無音のコマと構図の妙で『時間経過』を表し、結果!私に最高のワクワクを届けてくれる冨樫に感謝です。

最後に

このハンタブログ…全くページが進みません。今回も1ページちょっとです。でも良いのです。だって感動してツッコまずにはいられないのです。
しかし!次の記事はいよいよです。

ではまた。