(ハンターハンター ©冨樫義博/集英社)…このアイキャッチの画像、他作品のトレースだとは思うのですが…あなたは知っていますか?
こんにちは、サチヲです。
“クラピカの演技” というとクラピカに大変失礼ですが、読者である私たちが避けて通れないのがキャラクターの後ろからチラチラ見える 『冨樫の影』 です。
冨樫の繊細な描き分けを含んだ、ありとあらゆる技術と工程を紡ぎ合わせた結果、ここまで高いドラマを表現しているという意味で…あえて“演技”とさせていただきます。
言葉という便利な道具を使わずに、観客の心を揺さぶる 『非言語の演技』 は、現実の俳優にとっても最も難易度が高く、かつ最も純粋な表現でしょう。
そんなムズカシイ表現をマンガの世界で…ともすれば“伝わらない”というリスクを冒してまで、冨樫は自身の作品で 『非言語の演技』 を多用するのです。
そのリスクの先には 『共創のプロセス』 という、全てを言葉にしないことで読者は 「クラピカは今、何を考えているのだろう?」 と自ら歩み寄ることによる作品への没入感を高める効果という果実を得ているんです。
私が、特に心を打たれたシーンがこちらです。
もくじ
【ハンターハンター】『クラピカの言葉に出さない表情だけの“演技”』 | 冨樫の描き分けの先には共創のプロセスへの階段が…待っている。

ハンタ12巻より 『No.108 ◆ 9月4日⑦』 で、クラピカは自身の念能力の秘密を仲間(ゴンキルレオリオ)に打ち明けた後、クラピカ自身の命を守るため “また” 旅団のアジトへ行き記憶を読むパクノダを捕獲(コロス)するという非常に危険な計画を詰めているシーンの終わりの場面です。
今回、取り上げたいのは真ん中のコマです。

1コマ前までは、あんなに談笑していたのに…ゴンに見られないように、キルア“だけ”に向けた右側のコマをご覧くださいませ。
クラピカの憂いの目には、私事に巻き込んで申し訳ないという後ろめたさ…
感情を乗せていない真っすぐ伸びた眉毛からは、それでも“この計画”は必ず遂行するという覚悟…
いつものクラピカなら“オレ様的”な雑な物言いをしているのに、少しうつむいた顔の角度からは、命がかかる計画に参加してくれたことに対する、控えめながらも心の底からの敬意…
全ての秘密を打ち明け、尚且つ全てを受け入れてくれた仲間に対する絆ができたからこそ、強く噛みしめた口元には言葉を発せずとも伝えることができる感謝の表現…
左側のコマでは…クラピカのその立ち居振る舞いを、キルアはちゃんと気づくことができる… “ホントにいい子” なんですよ。
少し下げた口もとは、気づかたからといって余計なフォローを入れるとゴンが“また騒いで”面倒になるからキルア自身で受け止める度量…
目線を逸らしながらも上に向いている目からは、仲間との馴れ合いに慣れていないキルアの強がりと恥ずかしさという機微を表現した繊細さ…
でも、顔の向きはちゃんとクラピカに向けていることから“この先に起こることの理解”をちゃんと示す覚悟…
眉毛は上に向かっていることから、決して気弱になっているのではなく、頼まれたことは必ず遂行するという安心感…
クラピカとキルア。なんとここまで 『No 会話』 なんですよ。
キャラクターが1から10まで全てを説明(表現)しきってしまうと、読者はただの 『目撃者』 に留まってしまいます。(まぁ読んでいるから目撃者ではあるんですけどね…今回はそういった意味ではなく)
しかし!冨樫はあえて表現を削ぎ落とし “余白” を作ることで、読者は自分の記憶や感情を投影し、キャラクターと共にそのシーンを完成させる 『当事者』 へと変わるのです。その結果、ここまで勝手な妄想が出来るんです!
今回に限らず、全ての作品において冨樫は “余白” を意図的につくっているからこそ、私のような輩に妄想ができる余地を残してくれているのです。
そして!妄想が大爆発しているからこそ、私はハンタの世界にもっと奥深くキャラクターと共に居るような感覚にさせてくれているんです。
このように 『共創のプロセス』 という視点から見ると、演技を単なる 『発表』 から 『体験』 へと昇華させる非常に重要な鍵。
例えば、とあるキャラクターが悲しいシーンで 『泣き叫ぶ』 のではなく、ただ 『震える手で手紙を持っている』 姿を見せたとします。
この時、読者の脳内では以下のような推論が働くのではないでしょうか。
「なぜ彼は泣かないのか?」
「耐えているのか、それとも実感が湧いていないのか?」
「手紙の内容がもしかして…」
この 『問い』 こそが共創の入り口です。
読者は自分の経験に照らし合わせ、その空白を自分の感情で埋めようとします。
人それぞれ人生の軌跡があるからこそ、感想がバラバラになるのは当たり前だし、正解不正解がないのです。
いわゆる 『読者に託す』 という感じですね。
この共創の入り口に入った人から、作品の世界に『疑似体験』することによる、一つの感情を共有する土壌ができる。
結果、『沈黙』という余白は、次が予測できないため読者の集中力を最大化させ… 「彼が次に何を言うか、何をするか」 を必死に読み取ろうとするエネルギーが物語の熱量を引き上げる寸法になります。
…冨樫のこの技術、スゴすぎませんか!?
最後に

共創のプロセスには、『信頼』があってこそ成立するのです。
作品の中での信頼は、クラピカに対するゴン、キルア、レオリオになりますが…物語の中にここまで引き込めるのは冨樫と私の信頼があってこそなんです。
作者を根本的に疑っていたら、ここまで作品に引き込まれませんからね。
今も腰痛と戦いながらも、連載再開に向けて準備している冨樫に…最大限の感謝と敬意を持ってハンタブログを書き続けたいと思います。
今回の物語は、『ハンターハンター12巻』にて読めるので、興味のある方はAmazonリンクを貼っておきますのでどうぞ。
ではまた。
