(ハンターハンター ©冨樫義博/集英社)
こんにちは、サチヲです。
とうとうここまで来ました。
まさに『良いモノほどシンプル』を体現した戦闘描写と言っても良いのではないでしょうか。
ちょこちょこ書いてはいますが…今回(No.098)に限っては“動きのある戦闘シーンではキャラクターの思考を語らせない。動きのない戦っていない『静』のシーンで語らせる”という『メリハリ』がポイントなのではないでしょうか。
そもそも!今の今までのらりくらりと小出しにされた為に「もっと長く戦闘シーンを見たいッ!!」という私の心の叫びを一気に満たしてくれたことも大喜びをした要因の一つですよね。
先ず、最初に『静』のシーンで“必要最低限”の会話を挟むんですよ。冨樫は…。
シルバ「親父(おやじ) 気をつけろ 奴は他人の能力を盗む」とね。その後ページをめくったら…。
もくじ
【ハンターハンター】『クロロvsゼノ・シルバ』 | 手の内を探る、まだ手の内を見せない…いわゆる前哨戦の時点でコレですよ

で!3人の姿が2コマ目で「ヒュッ」って影も形もなくなるのです。急にです。
というか、こんな居なくなり方ってありますか!?3人ともですよ!
だいたい“どちらかが早い動き”を演出するのは見てきましたが、3人ともスピードが拮抗している絵を見ただけで「どちらが上か、まだまだ分からない」を絵で語っているのです。
そして3コマ目に至っては“1コマで4コマ分の動きを表している”のですよ。
●1番目の動き⇒右奥でシルバが走り込んでいる。ちゃんと遠くで走らせることにより、戦闘会場を広く使った臨場感のある戦いを演出。
●2番目の動き⇒その遠くで走り込んでいる場所から「ヒュオッ」とクロロの左手から現れ、右足の蹴りで頭を狙う。これでシルバは『決して念能力“だけ”に頼っていない強者』という印象を与えている。
●3番目の動き⇒シルバの蹴りを、上半身をかがめて避けるクロロ。もしもこのシルバの蹴りをクロロがガードしていたら“クロロは追い詰められている感”が多少出ますが、ギリギリではなくハッキリと避けることによって“まだシルバの動きは見えてますよ”という『余裕』の演出もされている。ちなみに、クロロの上半身だけ“動きの斜線”が入っているが、下半身には全く入ってないことから“クロロがたまたま立ち止まった所”をシルバが蹴りを入れたことが分かる。これでシルバは走り込みながら、遠くからしっかり観察してから動いたことに繋がる。
●4番目の動き⇒クロロがしゃがんで避けた所を、ゼノが「ヒュ」と“狙って”現れる。ゼノの全身に描かれた斜線の勢いを見ると“ゼノも”遠くから様子をうかがっていた事が分かる。更に、シルバの攻撃の先に“挟み撃ち”という形を取っていることから2人の連携が最初っから取れている演出。と同時に、2人でよく仕事をしていたのかなぁ…とか、2人でよく修行していたのかなぁ…と想いをはせるのです。
これは、マンガは右から読む…という少年マンガの特性を活かした『流れ』があるからこそ成立するのではないでしょうか!?
コレを、たった1コマに!
まだ戦いがはじまって3コマ目に!
この、4つの動きを1コマに入れ込むことにより『スピード感』を絵で表現する。このような所業を冨樫はしたのですよ!!
私のような素人が描いたら、4コマに分けて原稿料をもっと取れる感じにしながら、結果!ダラけた戦闘シーンになってますね。
2人で畳みかける『波状攻撃』をクロロに叩き込み続ける。しかしお互いに決定打とまではいかない中…

なぜ、このページを選んだのかと言いますと…シルバとゼノの『攻撃の擬音表現が違う』のです。
シルバの拳での直接攻撃には、赤く大きく「ドッッ」。
ゼノの「はつ!!!」の攻撃には、黒く細い文字で「ドドン!!」。
これ、どう思います?
明らかにシルバの攻撃の方が強い感じがしますよね。
今まで散々攻撃しているが、お互いに決定打が無かったんですよね。
そこでゼノは…強さを重視したのではなく、攻撃を当てることに重視した“軽く早い攻撃”に切り替えたのではないでしょうか。
現に次のページでシルバにフットスタンプの追い打ちを受けて、クロロは“やっと”ベンズナイフでの攻撃に切り替えたのですから。
その後、『静』のパートにて…思考戦が突然はじまるのです。この緩急はなんなん!?

この美しくも別次元な思考戦については、他で語られまくっていますので…私は構図で攻めたいと思います。
この1ページは、位置関係と状況説明、更には自分の攻撃が“どれだけ通用しているのか”を探るシーンです。
何がすごいのかって、クロロとシルバを大きく左右にコマをまたいで描いているんですよ!!
これで『遠・中・近』を、うまく表しているのです。
3人の位置関係が分かり、近距離でシルバとクロロの体の汚れ具合を見せることにより「2対1はさすがにきついな…」というセリフの裏付けを取る。
シルバに至っては、冷静に読者が分かる範囲で毒の処理を淡々とする。
これぞ『美しい』という言葉がピッタリな構図ではないでしょうか。
最後に
No.098はココで終わりなので、一区切りしますね。
ここで…この号で、いちばん好きな一コマを共有させてください。

確かこの頃…私は高校生くらいだったかな。この「問題ないすか 0.1㎎でクジラとか動けなくする薬なんだけど」と暗唱してからよく寝ていましたね。
ではまた。
