(ハンターハンター ©冨樫義博/集英社)
こんにちは、サチヲです。

設定作るの大好き冨樫がとっても滑らかで違和感を感じさせず、もはや美しさすら感じさせてくれるのが『世界観』とも呼べる設定です。
ハンタの世界での…一般人の強さ。通常兵器の強さ、政治力も含めた利権の強さ、マフィアの強さとの対比にあたる“念能力者の強さの質と立ち位置”が明確に作り込まれているのです。
もちろんファンタジー作品ではありますが、この丁寧に作られた“力のバランス”が後半になってもブレずに表現されているので限りなく現実的で身近な世界を作り上げているのです。
だからこそ私たち読者は「そんな訳あるかー!」という愚問とも呼べるツッコミを入れることなく、穏やかに自然にハンタの世界へ入っていけるのです。

今回は『ゾルディック家当主の素手の力』をもってハンタ世界のリアリティと、その表現のサジ加減を楽しみましょう。では、どうぞ。

【ハンターハンター】『リアリティ』 | ハンタの世界観とも呼べる大切で繊細な“サジ加減”がココにあらわれるのですッ!!

(ハンターハンター ©冨樫義博/集英社)

ご覧いただけましたでしょうか。この美しさですよ。
先ずは『擬音の対比』のサジ加減です。
シルバは烏合の衆と化したマフィア連中を、文字通り“拳一発”で黙らせたシーンです。
壁を殴った音は1ページの真ん中に大きく「ドオ!!」と描き、ついでにフォントも荒々しさも出していますよね。
なのに…それなのに!建物の響きや崩れ具合の音が「ゴゴ…」「ギシ…」「ズズ…」という擬音が…なんて控えめなことですかッ!
文字の大きさや太さ、ついでにフォントもシンプルにまとめて、尚且つ!“文字の大きさを合わせる”ことにより“確かに強い衝撃ではあったが建物が崩壊するまでもないサジ加減”が表現されているのです。

その裏付けとなるのが、次のサジ加減である『叩かれた壁の壊れ方』です。
正直な感想は「音の割には壊れ方が少ないな」と思いました。
でも、よーく見てください。
シルバは“念能力を使わずに素手の力だけ”で叩いたのです。
いつものように私の妄想全開の解釈になりますが…シルバほどの念能力者が、練で生み出したオーラ全てを一点に集める“硬”で叩いた拳ならもっと破壊されていると思いませんか!?
この『一般人と念能力者の素手の力』のバランス感覚が絶妙に説得力とリアリティを増す結果になるのです。

蛇足ですが、壁を叩いた時の音を「ドン!!」ではなく「ドオ!!」もいい感じだと思いませんか。
“ドン”は見慣れていると言いますか…多少マンガ的な表現として使い古されていると感じますが“ドオ”の方がホントっぽく聞こえる感じしませんか??
しかも!人物と建物をかなり遠くから引きで描かれた『構図』も、威圧する側とされる側が分かりやすく表現されている所も大好きなのです。

最後に

(ハンターハンター ©冨樫義博/集英社)

だからこそ!ゼノじいちゃんの「ワシならこの場で7秒以内に全員殺れる」という、ともすれば“嘘っぽく聞こえる”セリフが「あぁ…シルバの素手の力がコレなら、ゼノじいちゃんも本気出したら…マジで7秒かからないな」と思わせてくれるのですッ!!

本当に最高です。
ではまた。