(ハンターハンター ©冨樫義博/集英社)
こんにちは、サチヲです。
物語が進むにつれて登場人物の強さが際限なくエスカレートして、初期の強敵が弱く見えたり、新たな敵の設定が非現実的になったりする現象…いわゆる、格闘技マンガにおける強さのインフレ問題。
インフレが起きている最中は、読んでいる側は“ワクワクしている状態”だから良いのだが、それが続くと…作品のリアリティや緊張感を損ねる可能性がありますよね。最悪、読者の離脱につながることもあります。
特に!前回の『クロロvsゼノ・シルバ戦』については、まさに“強さのインフレ”が起き兼ねない状況でした。
連載当時としてはハンタの世界でも“最強キャラ同士であろう激突”を描いてしまったのです。
それこそ何年もかけてクロロとゼノとシルバの強さのエピソードを丁寧に積み重ねた後、冨樫にしては珍しくストレート(分かりやすい・ページが多い・途中を端折らない)に描かれた戦闘描写に驚きました。
同時に、そんな格闘技マンガの王道を描いているからこそ…「もうこれ以上の戦いは見れないのかな」という不安を勝手に抱いてました。
いやいや…ご安心ください。
我らの冨樫は“そんなこと”は織り込み済みだったのです。
そもそも『強さのインフレ』に関しては『念能力の導入』によって解決済みにも関わらず、それとは全く別のやり方で私たちに夢を魅せてくれたのです。それが…
もくじ
【ハンターハンター】『強さの魅せ方』 | 強さの上限をどんどん見せるのではなく、強さの底を見せて先送りにする技術。です!!

私め…結局、冨樫の掌の上で完全に転がされてしまいました。しかも気持ちよく。
だって思い出してください。
先週、ゼノじいいちゃんは額に青筋を立てながらシルバにこう叫んだことを…。
「今じゃ!! 殺れ!!!!」と。
その後、シルバの容赦ない力を凝縮した巨大な球体のオーラを2人にぶつけたのに…のに!ですよ。
ほら…見てください。クロロとゼノを状態を。
あんなに盛り上げといて、あんなに“頂上決戦感”を出しておいて、あんなに死を予感させていて…服がちょっと破けて顔が埃だらけになったダケェ~~!!でございます。
しかしながら私め、重要なことを忘れていました。それぞれの目標以上に、それぞれの性格というか特性のことを。
- ゼノ・シルバの目標⇒殺しの依頼を受けての『仕事』だということ。
性格・特性⇒ゼノもシルバも、前から仕事はきっちりやるが、ガツガツはしていないコト。 - クロロの目標⇒競売品を盗る。ウボォーさんの弔いの為『派手に殺る』こと。
性格・特性⇒幻影旅団は『盗賊』と作中で明言されている…その頭であるクロロが『殺し』よりも相手の念能力を『盗る』方を優先するコト。
ここまで振り返れば、結果『相手を殺す』こは目的にダイレクトに関係する目標なのは明確なのですが…なんてことはない。直接手を合わせたこそ“分かる”感覚は会ったのでしょう。
それは、お互いに本気ではなかったというコトだったのです。
冨樫よ…見事!!としか言いようがありません。え!?本気じゃなかったの??です。

この『強さの魅せ方』を成立させるためには…『これが現時点で最強!!という戦闘を本気で思わせること』という、頂点をしっかり描く必要があります。
コレはもう十分に果たしているでしょう。
その後『これが最強ではない。まだまだ本気を出していない』という最強の上限をみていたつもりが、実は上限ではなく『強さの底』を描いていたという…。
この尋常でない大きさの“ふり幅”が、この時点で最強レベルのキャラクターであるであろう“クロロ”と“ゼノとシルバ”の強さを抑えることに成功ししているのです。
冨樫の技術の高さを魅せつけられる、最高の戦いでしたね。
それにしても…去り際のシルバの表情と目線ですよ。全く隙がありません。頬がこけているのが、またカッコいい。
全く関係ありませんが、幻の念能力『紋露戦苦(モンローウォーク)』披露する前に、上空から降ってきたシルバに瞬殺されたキメラアント師団長のひとり…ヂートゥを思い出しました。
そうです。殺ろうと思えば殺れるのです。
最後に…ハンタ名言の中でも、日常でも使いやすい言葉をもって『クロロ・ゼノ&シルバ戦』を締めとさせていただきます。

クロロ「しんどーーー ありゃ盗めねーわ」
え。クロロ…かわいいのかよ。
ではまた。
