(メダリスト©つるまいかだ/講談社)
こんにちは、サチヲです。

好きなコトやモノを語る時、どうしても擬音が多くなったり、 「あーゆーヤツって…あるよね?」と相手に説明を委ねたり、下手をしたら“その好きなモノの名前”すら間違えることもあるのです。要するに、私の説明は、どうしようもなくポンコツなのです。
周りの人の優しさで、どうにかコミュニケーションが成り立っていると言ってもいいでしょう。
相手が友達ならそのように甘えることができますが、初めての人(仕事関係や他コミュニティー)と話す時は地味に困るのです。いや!困るのは相手のほうです。
私が商品の話をしているのに相手は「ん!?」ってなったり、いったいナニを言いたいのだろう…と思われたり、 「良いコト言ったったー!」と思って相手を見たらポカーンとされていたり…という具合に、ダメなエピソードはいくらでも出てくるのです。

今回はマンガ『メダリスト』から司コーチが、まさに言語化の師匠と崇めるべきッ!!と、思えるくらいの技術を魅せてくれたのです。
たとえ!それが熱意と想いからくる“天然”だったとしても、そのおかげで自分たちの本気(ジョーシキ)を貫き通すことができたのです。
それは、芸術やスポーツ関係…というか、およそ『プロを目指す』過程で多く(多分…)見られる『考え方』でもある…

★『本気で目指すなら犠牲や制約を受けるのは当たり前だよね。 “それ”を捧げることが出来ない人はやる気がない』と思われてしまう風潮

大げさに言いますが、コレが世界の常識(業界の常識)だ!と言っても過言ではないくらいに信じられている界隈があるとことです。
いや、かく言う私も! 「時間、お金、労力を捧げた分だけ手に入るんだ!!」と思っていた『本気ならここまでやれ』側の人なので、司コーチの言葉を聞いた時 「あぁ、こーゆー考え方もあったんだ。他の手段もあったんだ」と、必要以上に響いたのです。

【メダリストから学ぶ】『言語化』 | その世界の本気(ジョーシキ)に立ち向かう技術があると…飲み込まれずに済む

(メダリスト©つるまいかだ/講談社)

フィギュアスケートでオリンピック金メダルを獲ることを目標にしている司コーチといのりさんの練習環境は、 “持っている人”から見ると足りないように見えるのです。
持っているモノとは…たとえば、選手だけが使える専用リンクがあるのか。クラブに専門トレーナーがいるのか。陸トレ・バレエレッスン・座学などが個別レッスンが受けられるのか等々。
コレ全て揃っているのが、ライリー・フォックス(ライリー先生)さんがヘッドコーチを務めるスターフォックスFSCというクラブである。
なんせライリーさんは過去に、当時弱冠16歳でシングルアメリカ代表としてオリンピック金メダルを獲得した人ですからね。そりゃ大人が動くし、お金も動きますよ。
司コーチが在籍するルクス東山SFCのクラブには“それら”はない。というか、ここまで揃っているクラブは稀である。
そんな全てを持っているライリーさんから、こんなコトを言われます。

ライリーさん「司先生が本気でいのりちゃんのことを第一に考えるなら 答えは明白では?」

この後に言われたのが、先ほどのコマにあるセリフである 「本気で上を目指すのであれば…」である。
もう正論すぎて、文句のつけようがありません。
さて!もしもあなたに目指しているモノがあった時、確実に上のステージに行ける環境が手に入る『引き抜き交渉』を受けたとしたら…どうしますか?
私なら、願ってもないチャンスだと捉えて、魂を速攻で売り渡します。

しかも!同時にライリーさんの生徒さんから“同じように”いのりさんんも引き抜きアタックを受けるのです。

(メダリスト©つるまいかだ/講談社)

鵯朱蒴(ひよどりすざく)「スケートに本気な子は みんなスケートのために引っ越しも転校もしてるよいのりちゃんも本気なんでしょ?」

ここでも、まるで呪文のように『本気なら…』と選択を迫られるのです。
現役の子どもが純粋無垢にこのセリフを言わせるのも、現実(業界の常識)を突きつけている非情さ(最低でも〇才からはじめないとお話にならないよ)が際立ちますね。
もちろん私も同意です。私自身も、「10代から本気でやってきた人にはかなわねぇ」という現実に向き合うことが何度もありましたからね。もちろん、都度、戦い方を変えましたが…。

改めて! その世界で上を目指すと豪語しながらも、そのままの環境に居るのなら…頭打ちになり限界が来る未来が丸見えなんです。特に、もう上のステージに居る人から見ると…。
オリンピックという分かりやすくも最大の舞台だからこそ、環境の力は問答無用の強さでもあるし、誰しもが“それ”を手にすることは出来ないのも現実なのです。
よって『引き抜きを受ける』こと… “それ以外に大切なこと”はないと思って読んでいました。
そう。司先生の言葉を聞くまでは…。

「本人やご家族がいないところでお返事はできないのですが…」という枕詞を皮切りに、見事に価値観の言語化を果たしたのです!!

(メダリスト©つるまいかだ/講談社)

『声に出して読みたい日本語』として燦然と輝くセリフを全文書き起こさせてください。
普段は感情大爆発の司先生が、声を荒げることもなく理路整然と言葉を組み立てて話す姿は、私が目指すべき紳士像そのものです。
司先生、曰く…

クラブを東京に替えることは いのりさんにすごくたくさんのことを変えさせることになりますよね
『本気だから強くなるために引っ越した学校を転校した』
スケートの世界だけで見れば誠実な努力になりますが スケートの練習環境が改善されても新しい生活に馴染めなければ大きな心理的負担がかかる
簡単に言われては困ります

ライリー先生の仰るコレオの原因もまだ推測の範囲です
環境を変えて確実に強くなれるならそうします…
でも

(メダリスト©つるまいかだ/講談社)

本気の証明にしかならない空振りの犠牲なら一つも余分に払わせたくない

確かに専用リンクはありませんが 俺は今のクラブの環境にデメリットの方が多いとは思わない
俺だけじゃなく 複数の大人がいのりさん一人に多くの時間を割けるのは生徒数が少ない小さなクラブだからこその強みです

コレオと同じように 貸し切り練習が必要なステップシークエンスでレベル4を取った実績も俺たちにはある
急いで今の環境を変えなくてもあなたの生徒にも勝てると信じています

ライリー先生に対して、膝を突き合わすほど正面から向き合った圧巻の文章です。
この言動はまさに! 『足りるを知る』ではないでしょうか。
これは幸せ(成功)の基準を『外』ではなく、『内』に置くことを意味します。
何かを成しとけようとした時、つい「もっとお金があれば」「もっといい服があれば」と、外にあるものを手に入れることで幸せになろうとしがちです。
しかし、それではいつまでも『足りない部分』ばかりが目に付き、心が休まりません。 『足るを知る』とは、今持っているもの、今ある環境の良さに目を向けることです。

一方で、司先生の並々ならぬ熱意と具体的なデータの裏には、いのりさんと共に…いや、ルクス東山SFCのクラブの全スタッフ、いのりさんのお母さんとお姉ちゃん、共に切磋琢磨する仲間、そして最大のライバルである光さん。
これら全ての『今持っている内的・外的要因』が、今の環境に対する確信と選手としての強さに繋がっているという“実績を含めた(コレは地味に大切)考え”を見事に言語化した、めちゃくちゃ美しくも強い信念に昇華した瞬間です。

いやー、このライリー先生と生徒のひよどりくんの『本気アタック』は、ともすればパワーハラスメント、もしくはモラルハラスメントに該当する案件ではないでしょうか。
事実、その行動をしなかったらもう人間じゃない…というくらい蔑すんだ目で20代の頃は見られましたからね。
どうでしょうか。あなたにも経験があるのではないでしょうか。
私め、コレだけで夢を目指している人の『本気の過多』を測るのは辞めます。

私はメダリストの読者なので、ここまでの歩んだ二人の歴史を知っています。

(メダリスト©つるまいかだ/講談社) ☆今回のテーマにピッタリな扉絵です★

作者である、つるまいかだ先生は更に!読者である私たちに“司先生といのりさんの歩み”も思い出させながら、 「あぁ、そうか。そうだよな。司先生の言うとおりだよな。」と、読者を置いていきぼりにしないで共に歩ませてくれるのです。
このように素晴らしく繊細な物語を紡ぎつつ、学びや気づきを促すマンガが『メダリスト』なのです。

『持たざる者』と『持つ者』との戦い。
もしくは
それぞれの『犠牲』に対する価値観の戦い。

つるまいかだ先生は、どちらの視点からもしっかりと『健全な犠牲』を払わせた上で戦わせているので、バランスよく感情移入できるのです。
このような視点から読むと、更に作品のおもしろさを堪能できると思います。

最後に

実は私め。言語化を“さりげなく”鍛えているのです。
それが『サチヲん家』というブログです。
今持っている環境で、日々!感動や学びを『言語化する技術』を高めているのです。
しかしながらまだ話は長いし、余計な言葉は多いし、前置きが長いし、不明確なコトがたくさんあって読みにくいブログかもしれませんが…日々、精進でございます。
ただ、思いの強さだけは負けません。

ではまた。