/>【ハンターハンター】『非対称』 | 対称的な構図にすることで、より分かりやすく『非対称』であることをまざまざと魅せる…
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【ハンターハンター】『非対称』 | 対称的な構図にすることで、より分かりやすく『非対称』であることをまざまざと魅せる…

HUNTER×HUNTER ★布教

こんにちは、サチヲです。

同じシチュエーションで物語を進めながら、交互に“違い”を魅せていく。
そして、語気であったり、動きであたっり、佇まいだけで“温度差”を表現する。

わざわざ“戦い”を描かなくても、戦っているようにしか見えない作劇が静かにはじまる。冨樫、恐るべし。

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【ハンターハンター】『非対称』 | 対称的な構図にすることで、より分かりやすく『非対称』であることをまざまざと魅せる…冨樫義博め!やってくれるッ!!

(ハンターハンター ©冨樫義博/集英社)

先ずは、マチとノブナガが“ただ”オープンテラス席で座ってお茶を飲んでいる“だけ”の『絵』です。

既に、言いようのない怖さを心で理解できるほどの威圧感を感じますが…まだまだ雑談している“だけ”です。
ただ、その雑談内容が『ウボォーは本当にやられちまったのか、どうか』の話をしているんです。
マチは「おそらく…やられた」と。
ノブナガは「ウボォーはただの怪力バカじゃねぇ」と。
最初から意見が違うことが分かります。2人は続けて話します。

マチは「わかってるよ そんなことは」
ノブナガは「たとえ敵が苦手なタイプであろうが対応できるだけの経験と頭はもってる」
2人は『!』のような感嘆符はつけないで、淡々と考察しながら意見交換をする。

次に場面が変わり…ゴンとキルアとレオリオがいます。

(ハンターハンター ©冨樫義博/集英社)

マチとノブナガから十分に離れた、3階くらい上にある喫茶店のようなところでお茶を飲みながら…クモ(旅団)かどうかの真偽を確かめる為、バレないように静かに話す。

そしてレオリオは目視をして確かめる。「彼氏のうしろの席のカップルがそうだな 間違いなさそうだ」と。続けて「約束の金を振り込むから確認してくれ」と、クモを見つけた依頼人に報酬金を振り込む。
これで、最初の目標である『クモを見つけること』が出来た

同じシチュエーションで、もう一段階“違和感”が上がるのです。

マチ「今までアイツが集合時間に遅れたことがあったか?」
ノブナガ「だが お前も聞いたんだろ? ヤツは『鎖野郎と決着をつけるまで戻らねぇ』とハッキリ言ったそうじゃねぇか」
マチ「だからあたしも『おそらく』と言ってるんだ 間違いなくやられたとは言ってない」
ノブナガ「勘か」
マチ「勘だ」

そして、ノブナガは頭をボリボリとかきながら…
ノブナガ「おめぇの勘は当たるからなァ」と。
次に、マチとノブナガの『目』のアップのコマから突然視点が離れ、オープンテラスの挿絵が入り、ノブナガのセリフだけが浮き彫りになる…。
ノブナガ「探し出してぶっ殺す 必ずな」

このセリフの時だけ『表情』を見せないで描いているのです。という事は“相当な”怒りの表情だったに違いありません。
ただ、その怒りの描写を入れると急激に温度が上がってしまう。だから“まだ”温度を上げないためにセリフだけ抜き取る形に描く。
だがしかし、確実に1段温度を上げにきているんです。

それに呼応してゴンサイドも、静かに温度を上げていく。

ゴンとレオリオが、あの二人をどうやって捕まえようか?の相談を“まだ”緩やかに話していたところ、キルアが「無理だね」と一蹴しました。
そして、続けて言いました…。

(ハンターハンター ©冨樫義博/集英社)内容とは裏腹にあくまで平常心なキルアの表情がいい!

キルア「オレ達の手に負える相手じゃないよ」と。

即座にレオリオは言います。「なんだと!?やる前から んなこと分かるか!!」と。
キルアは冷静にゴンとレオリオに端的に“分かりやすく”説明します。

キルア「あそこにヒソカが2人座っていると考えたら少しわかるか?」

ゴンとレオリオはもちろんのこと…はい、私でも状況を素直に飲み込むことが出来ました。
それでも煮え切らない二人に対して、更にキルアは二人に畳みかけます。

(ハンターハンター ©冨樫義博/集英社)教えて“あげている”状況なのに、上から目線で言わない。そして言葉を二人に“伝える”ではなく“伝わる”ように話すキルアがいい!

キルア「あいつらなぜ 広場(こんなことろ)にいると思う?」と問いかけます。

レオリオ「そりゃお前、デートだろ当然」
ゴン「えつ そうなの?」と、若干のユルさを出すが、キルアがそうはさせない。

キルア「あいつら後ろのカップルにもちゃんと気づいていたぜ」と教える。

続けて、クモは周囲の様子や動きに細心の注意を払っている…だからこそ「間違っても視線は送るな」と、更に釘を刺す。そして…

(ハンターハンター ©冨樫義博/集英社)ちょい斜め左下からのアングルのキルアがいい!

ここで更に“温度”が上がる!
物語の温度はもちろんなのだが、読者にも戦慄が走るのです。
それは、丁寧な『フリ』と『落ち』が完成された瞬間だからです。

この記事のアイキャッチ画像を見てください。これは“この話”の1週間前に少年ジャンプで掲載された最後のページです。

(ハンターハンター ©冨樫義博/集英社)

発見者から「ヨークシンにホシがいました!!逃がさないように尾行中です!!早く連絡ください!!」と書いてあったんです。

最後のページという事は、次週の『新展開かもしれない』という期待感を出すクリフハンガーとして十分な価値のある『絵』なのです。
普通なら「やっとクモを見つけたんだ」となりますが、よーく見るとハッキリと「逃がさないように…」という『フリ』があるのです。

次週までの1週間の間読者は「あぁ、クモは見つけられたけど逃げられる可能性もあるんだ…」という誤解をさせる、言わば“ミスリード”を植え付けているんです。
通常の読者なら「クモが捕まるはずもなければ、こんなところで死ぬこともないし、逆に返り討ちになるんじゃない」という具合に“色々”と考察出来てしまうのですが、冨樫はあえて「逃げないように…」という選択肢だけを出すことにより、『他の選択肢を消す』という潜在意識を奥底に植え付けていたんです。

だからこそ!キルアの「奴等 見つかるのを待ってる 獲物が引っかかるのを待ってんのさ」という『落ち』がキレイに決まるのです。
その証拠に『フリ』が効いていた読者ならば「あッ!そうだったか!!」と、少なからず“驚き”があったはずです。
そしてダメ押しに、キルアの「狩る気満々さ」で戦慄が走るのです。

『フリ落ち』を終わらせた後の『フォロー』の部分で温度が異常なペースで上がるんです!

実はお笑いも、『落ち』で笑いが取れていると思いきや、『その落ちに対してキャラクターがどのような態度や言葉を発したか?』という『フォロー』の部分で大きく笑いをつくり上げるのです。
ハンタで言えば…
今までは丁寧に、言葉や仕草、そして状況を少しづつ明確にしながら『フリ』を積み上げてきました。
次に、“クモはマフィアに追われていると思っていたが、実は狩る気満々だった”という『落ち』をつけました。

そして!狩る気満々のクモが、どのような言葉と態度を示したのか!?
『フリ落ち』が効いているからこそ、マチとノブナガの“殺意ある緊張感の作劇”という『フォロー』が、抜群に恐怖を覚えることが出来るのです。

短い作劇ですが、是非!ここはあなたに直接読んで体感してもらいたいので、内容は割愛します。でも…最後のページだけ見てください。

(ハンターハンター ©冨樫義博/集英社)

この緊迫感の最高潮を、冨樫は平然と描くんです。
戦わずして…会話だけで、このドキドキ感。だから好きなんです。

今まで、ゴン・キルア・レオリオとマチ・ノブナガという対称的な構図を見せていたのに、最終的にはそっちとこっちは全く違う…『非対称』を明確にをつけて描くんです。
これも冨樫の魅力の一つですよね。

最後に

キルアのカットをたくさん載せちゃいました。
私め、やっぱりキルアが好きです。

今日も、ウチに遊びに来てくれてありがとうございます。
ではまた。