(メダリスト©つるまいかだ/講談社)
こんにちは、サチヲです。
あの!圧倒的画力と躍動感で、私が全く知らないフィギュアスケートの世界を描いたマンガ『メダリスト』。
日の光が当たらなかった現場の人以外誰も知らなかったであろうジュニアの環境を、どこまでも奥深く注意深く描いているマンガ『メダリスト』。
ジュニアの年齢は小学生低学年だからこそ当たり前と言っちゃ当たり前かもしれませんが…なんと子育ての『考え方』の一つを披露してくれたのです。
もちろん人の数だけ正解があるジャンルなので、その中の『一つ』だと思ってください。
ただ!私は、その考え方に感動しました。このような親でありたいなぁとも思えました。私め…もう完全に信者です。
先ず…いのりさんの前提の説明を簡単にします。
1,初めての海外遠征で緊張している。
2,そこで不安になり、ルクス東山FSCでヘッドコーチを担う高峰瞳さんの部屋まで押しかけ相談する。
3,相談内容は…私より小さい子たちでも、先生たちに注意されなくても出来ている姿を見て、大人に見えた。
4,私は中学生なのに甘えてばかり…小さい子みたいで恥ずかしいです…。という相談をする。
5,それに対して高峰さんは、しっかりいのりさんの顔を見た後に「恥ずかしがる事はないわ」と口火を切る。
6,その後、高峰さんから紡がれた言葉とは…
もくじ
【メダリストに学ぶ子育て】『大人になる方法』 | もちろんこんな恵まれた環境は無い!幻想だ!は分かります。しかし…あまりにも凄くて取り上げたくなるのです。

高峰ヘッドコーチ
「大人になるためには子供として大事にされた思い出がたくさん必要なのよ」
「大人になろうと決めた後でも 思い出が足りなければ子供に戻っていい」
「忘れ物を取りに帰るみたいに 子供と大人を行ったり来たりして少しずつ大人になるの」
よろしいでしょうか。このセリフ内容が素晴らしいことは変わらないのですが、その『言葉の効果』を十二分に発揮している重要なポイントがあるのです。
それが『高峰ヘッドコーチの表情』です。
もう一度、表情を見てください。この優しさと落ち着きと、なによりも『上から目線』ではない絶妙なサジ加減で描かれているのですッ!
ともすれば、正論説教オバサンになり兼ねないところ…この寄り添った、目線を同じにした…相手の状態を見てゆっくりと話した…この余裕がいのりさんを落ち着かせるのです。
ひとつ、少し想像して欲しいことがあります。
子どもと一緒に遊んでいると、実は『ケガをする場面』にしょっちゅう出くわすのです。
もちろん、骨が折れたり外れたりしたら即病院です。
この場合、絆創膏を貼ったら大丈夫な程度のケガだと思ってください。
絆創膏程度のケガに対して、大人が「えー!子どもちゃん、大丈夫なん!?」と騒いで、「痛かったでしょうぅ…」と大げさに言うと、子どもは心の中で「え!?そんなに大変なことなんだ」と感じて「ぎゃ~ん!」と泣くのです。
実際のところ、子どもは大人が思っている以上に観察しているのです。
もう一つの手段として、大人が笑顔で「このくらいな絆創膏貼ればだいじょうぶぅ~」と言うと、子どもも“そう思う”のです。そして、貼った後は何もなかったかのように元気に走り回るのです。
別に『その対応』がダメとは言っていません。子どもは“大人を見ているという事実もある”ということを言いたいのです。
先に進めますと…
今回の場合【高峰ヘッドコーチに選手であるいのりさんが相談をする】という状況は、ヘッドコーチとして問題解決するべき【いのりさんの不安を確実に解消する】という目標が瞬時に設定された場面になります。
それは全コーチやスタッフ全員に【次の試合までに選手のメンタルケアも含めて万全な体制で臨ませる】という目的共有がチームとして明確だからです。
これがもし、近所のオバサンにいのりさんが相談したのなら…「あらぁ~、そんな大変なことがあったんだねぇ」という慰めや、「いのりちゃんはよくやっているよ」という励ましの言葉をもらう未来もあるのでしょうけど…今回はそれぞれ目的と目標が明確に打ち出されているで、近所のオバサンに関しては“今回は”大人しくしていただきます。
何故かというと…実は、いのりさんも明確な目標を持って相談しているのです。
先ほどの近所のオバサンではモヤモヤが取れないことを感覚で理解しているのです。
先ず【共感し慰められても、無根拠に励まされても『私の不安を取り除く』という問題解決にはならない】という判断をしています。
それは【自分の感情は吐き出すための言語化とその問題解決する】という目標を元に、【選んで高峰ヘッドコーチ】のところに行っているのです。
メダリスト読者ならお分かりの通り、いのりさんは本来…困ったことがあったなら迷わず専属コーチである司コーチの元に相談しているはずです。
しかし、ことメンタルに関して言えば、あの!感動屋さんの司コーチでは、近所のオバサンのように大げさに受け止められて、派手なリアクションをされて…それだけでは結果、「やっぱり私は出来ない子」ということになる可能性大なのです。
もちろん、司コーチでも解決する未来もありますが…実は、もっとも重要であろう問題があります。
それは、いのりさんには“相談することによって、これ以上司コーチに負担をかけたくない”という思いがあるのです。
むしろ司コーチに相談する方が心的負担があるのです。
そこで、高峰ヘッドコーチの登場です。これらを踏まえてもう一度見てください。

この『言葉』と、この『表情』が合わさったからこそ、いのりさんは素直に状況を理解し、次のステップへ進めたのです。
…これ、凄くないですか!?
この、つるまいかだ先生はどんな人生を歩めばこんな繊細なマンガを描けるのでしょうか。
人材育成専門の会社で働いていたのでしょうか。私、わからんちんでございます。
最後に
このマンガ…なんなんでしょうホントに。
読んでて怖いです。でも、おもしろいのです。
これがデビュー作品とは…信じられません。
ではまた。
