(ハンターハンター ©冨樫義博/集英社)
こんにちは、サチヲです。
前話(No.98 9月3日⑭)では、ゼノが「ワシもろともで構わん 殺(や)れ」と言って、シルバが「了解」と言ってクロロのオーラ全開のコマで終わるという…。
物語の続きが気になって仕方なくなるような、最も盛り上がった場面で話を中断する手法である『クリフハンガーがめちゃくちゃうまい』で有名な冨樫が、まさに読者の期待感を最大限に引き出す。
そんな“コト”をしておきながら、次の話(No.99 9月3日⑮)の冒頭の1ページ目が見てください…。
もくじ
【ハンターハンター】『クロロvsゼノ・シルバの続き2』 | 流れをしっかりコントロールしているからこそ“ただの戦い”が…より物語性をおびた見ごたえのある作品に昇華されるのです。

コレですよ。この映画的な構成にして、設定を忘れかけていた私に対してしっかりと思い出させるのです。
先ずは、状況。マフィアと旅団が未だに戦っているカオスな状態であること。
続けて実際の被害。 家屋の破壊と炎上。そして、死人が出ていること。
次に場所。3人が戦っている、競売をしているビルの全景。
最後に、扉の絵。ゼノとシルバが最後に辿り着いた扉を描くことにより読者も戦いの場に連れ戻す。
このように状況・被害・場所の絵を静かに描き、先週までの熾烈な戦いを忘れさせるくらい淡々と流れるコマで1ページも使っているのですよ。
文字がなく絵だけのコマが流れる。けれども、なんとなくメッセージは受け取れる。実はコレ…冨樫は“絵で言葉を伝えている”のです。
藁に、これらのコマは遠い視点の画から近い視点へ移動しながら戦いの場所となった扉まで描くことにより“物語に緩急をつける”ことになる。
そうです。
このように冨樫は『絵』だけで言葉と時間をもコントロールして、作品の面白さを表現をしているのです。
真に美しいのはココからです!!静から動へのつなぎ方はもちろんのこと、先週との繋がりも表現しているという…

次のページで、やっと3人を描き、現実に引き戻すのです。
映画的と言いましたが、先ずこのカメラアングルこそ映画的なカメラ目線だとは思いませんか。
しかも、このコマ!先週号の続きにちゃんと“なっている”のです。
クロロが『ズ…』と禍々しいオーラを出していますが…先週を思い出しましょう。
「ご名答…やりづらいジイさんだ 仕方ない」と言ってベンズナイフを後ろに投げ捨てた後の!今のコマのクロロが『ズ…』に繋がるのです。
次に、ゼノたちの挙動も思い出しましょう。

先週号の最後に「シルバ サポートせい ワシが奴の動きを止めたら」と言っているコマは“既に”前へ歩き始めているのです。
事実。そのセリフのコマは、シルバよりも前に出ています。
そのやり取りを、セリフを書いてないにしろ今週号では後ろで高いところからのカメラアングルで描いているのです!
まさにその場面を切り取ったところに戻しているのです。その後…。
先週号の終わりと今週号の『繋がり』を描く最終地点がこちら

上のコマが先週号。下のコマが今週号。
なんと!!…3つのコマで、同じ状態に戻したんですよ!!!
今週号の冒頭で状況等を俯瞰で描くことにより、私の“早く戦いの続きが読みたい”という私の気持ちをストップさせたこと。
これは、物語を流れを断つことになるし、ぶつ切りされている感は否めない状態でしたが…ここに来て親切丁寧に先週号と繋げて魅せてくれたのです!冨樫は!!
下のコマである今週号の3人の顔を見た時…「なにこれ。この構図見たことあんぞ」と思って先週号を読み直したらビックリ仰天でしたよ。
週刊連載というページ数が限られている中、長い戦いを如何に描いて見せ、魅せるのか。
もう美しさを通り越して怖いです。なんでこんなの描けるんですかね。
でも、そのおかげで!心置きなく最高の戦いに没頭できるという流れなのです。
ちなみに、もしも!今週号から突然戦いがスタートしていたら…戦いの流れのぶつ切り感が“それはそれで”違和感が出ると思いました。
最後に
気がついたらまだ2ページ分しか進みませんでした。
気を取り直して、次は『戦いのテンポ』についてひも解いていきます。
ではまた。
