こんにちは、サチヲです。

丹野智文さん。2013年、39歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断されて12年。
当時はネッツトヨタ仙台のトップセールスマンとして勤務しており、診断後も事務職に異動し、現在も会社業務として啓発活動を主軸に就労を“現在も”継続されている人です。
2023年に、ご自身の半生を描いた『オレンジ・ランプ』という映画も上映されたのでご存じの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

【丹野 智文さん】『失敗を失敗体験で終わらせない』 | 認知症世界に住んで12年。辿り着くべくして辿り着いた考え方とは

認知症でよく起こる失敗…という、狭い範囲のことではありません。
これは、もっと主語を大きくして『生きている全ての人の失敗』に対してどのように向き合うのが良いのか…という壮大な『問いの答え』と言っても過言ではないでしょう。
なので、もれなく“あなたにもきっと響く”と思います。
私はと言いますと、この一つの美しい『考え方』に心から「あぁ…そうだよな。お互いにとって“それ”がいちばんいい。」とストレートに突き刺さった言葉なので…いつものように、共有させてください。

丹野さん曰く…

私はね、常に失敗しているんですよ。
朝ね、パンを焼きます。隣の部屋でテレビの音がうるさいと思って消しに行きます。そうするとパンを焼いているのを忘れて、真っ黒こげにします。
で、妻は焼いてくれないです。「また焼けば?」って言ってくれます。
じゃどうするか。
パン焼き機の前から目を離さない。ずぅーーっと。そして、パンを取り上げます。

これは成功体験で終わっていますよね。成功体験で終わるから前向きになるんですよ。
これを妻がやってくれたら、失敗体験で終わってるんですよ。

失敗する権利を、奪わないで欲しいんですよね。
みんなんも失敗しますよね。だから失敗してもいいんだよ、って。じゃ失敗したらどう工夫するか。どうやって成功体験に結びつけるか。
これを一緒に考えてくれる仲間がいっぱいいてくれたら、本人は困らないんじゃないかな…と思います。

これは実に言葉が重い。
そして、強く優しい。
このような素晴らしい文章に対して、あえて『赤色の文字』で強調して考え方の誘導はしません。
読んだ方が自由に読み、感じたままを大切にした方が確実に刺さるはずですから。
改めて。
あなたは、どのように受け止めましたか。

実は、こちらの考え方は“どんな場合”も当てはまるのではないでしょうか。

会社では…部下に対して、他の部署に対して、同僚に対して、等々。
家族では…パートナーに対して、子どもに対して、等々。
こと『成長』に目を向けた人間関係をなぞらえると、こんなにも健全な『成長の道筋』はないでしょう。

もちろん「こんな考え方は当たり前のことだよ。」という声もあるコトは分かっています。
世の中に数多くある、原則に沿った理想的な『成長方法』の一つでしょう。
でも、それを“分かっていても”出来ないのが『手伝い方』です。

丹野さんが仰っていた通り、失敗した人に対して『答えそのもの』を差し出してしまう場合があるのです。
それには、れっきとした理由があります。
急いでいるから。恥ずかしいから。面倒だから。むしろ仕事が多くなる。自分がやった方が早い。等々、日常生活には“そんな余裕”はなかったりします。

それでも!意識するだけでも変わります。
真に『相手の為に!』と思った時には、ちゃんと“そんな余裕”ができる時間を作ることです。
よくするためにしていることなのに逆にギスギスするのは、お互いが“余裕がないもの同士”だからです。
中途半端な『手伝い』は、往々にして逆効果になりがちですよね。

だからこそ私も、これからはもっと心と体の余裕を普段から作るように意識して物事にあたります。
そして『どう工夫するか』や『どう成功体験に結びつけるか』を一緒に考えられるように…なによりも『黙って見守る』ことができるようにします。
その為にもしっかり余裕を作ります。
そして、言葉も行為もやさしくて強くなるといいな。

丹野智文さんについては、まだまだ語るべき切り口がたくさんあります。

特筆すべきは、丹野さんの仕事場であるネッツトヨタ仙台が、病状を理解し『働きたい』という意思を尊重したこと。
更に!文で書くと陳腐になり申し訳ないですが…家族の理解による姿勢と行動という環境作りにもお互いに真摯に向き合ったのだろうと容易に想像がつきます。
それは…きっと語られる事のない非常に泥臭くも必要な話し合い、歩み寄り、尊厳、敬意、素直、明確な目的の共有、課題と解決策への集中、と…上げたらキリがないくらいの山と谷を乗り越えた後のメディア露出でしょう。
私は、メディア露出後である『側』しか分からないにしろ、そのような世界もあり現役で走り続けている人がいることを知りました。

このような話のまとめで、よく「じゃ、自分は何ができる?」となりますよね。そして「献金をする」と「ボランティアで手伝う」とかありますよね。
私は少し違います。
この手の『応え』に対して、一貫した考え方があります。
それは『目の前のことを一生懸命にやる』です。
要するに、先ず自分も現役で走り続けて手の届く範囲くらいしっかりやっていくことだと思っています。
もしも、目の前のことが出来ていないとしたら…それは“余裕がある人”とは言えませんよね。

最後に

あくまでこれは、数ある考え方の一つ。選択肢の一つですから、お互いの笑顔に繋がるのであれば“あなたが感じた『そのまま』でいい”ですからね。

ではまた。