(メダリスト©つるまいかだ/講談社)
こんにちは、サチヲです。
つるまいかだ先生が描く『メダリスト』という作品は、スポーツ世界の楽しさと厳しさはもちろんのこと、特に『教育』の分野が社会人ではなく10代を対象としているので非常に繊細でありながら強い意志を持って描かれているのです。
「フィギュアスケートで金メダルを獲る!」という、願いではなく“そう成ることを決めている”のが本作の主人公である結束いのりさん。
他者から強制して“やらされている”訳でもなく、ましてや報酬(賞金・地位・名誉)を原動力にしていない。
いのりさんは、世界一の形として『金メダルを獲る』という確固たる目標が最大のモチベーションとしているのです。
そんな強い意志を持ついのりさんに対して、最高のコーチである司さんの教育方針は根性論や精神論ではなく、『自律性の育成』と『能力の最大化』を核としつつ、彼女の『内発的な動機』を最大限に尊重・活用しています。
今回は人としての自立性を育む中のひとつ『自分を自分自身で守る術』とでも言いましょうか。司さんが体験を通して伝えた『考え方』とは…
自分をおもちゃにされた時は相手が楽しそうでも起こっていいんだからね
もくじ
【メダリストから学ぶ】『自分がおもちゃにされた時には…』 | 子どもに教えたい大切で大事なコト。自分を自分で守る術。

では、『おもちゃにされる』の定義からいきましょうか。
今まさに!昔の司コーチを知る2人に、からかわれ、笑いの種にされたのです。いわゆる『イジられる』と言えば分かりやすいでしょうか。
ともすれば『いじめ』とも受け取れるこの環境のポイントは、たとえ相手がそのつもりはなくても、自分自身が“そう”思ったら“そう”なのです。
今回も、明確に「俺のこと好きなら恥ずかしい気持ちを揶揄わないで欲しかった…」と、行動と人格をしっかり分けて伝えました。
ただし、場の空気をほぐすためにあえて“自分から笑いの種をふる”ような、意図した環境を自分で作った場合はのぞきます。(自分でふって、自分で怒るという自作自演のフリ落ちも効果はありますが…)
そもそも、このような『人生の教え』とも呼べる考え方が、教え子であるいのりさんに“響く”には、相当な信頼関係がないと成立しません。
はい。ご安心ください。
司さんが「いのりさんを巻き込んで悪いけど…」のセリフの時の、隣にいるいのりさんの表情を見てください。
どんな時でもニコニコしていて前向きな司さんが怒っている。こんな滅多にない状況に驚きながらも、しっかりと顔を向けて静かに聞いていますよね。
この、伝えたい相手との『信頼関係の築く』ことが一つ目のポイントです。
こんな『聞く姿勢』が出来ているいのりさんを知ってか知らずか…続けて司さんは説くのです。

司さん「いのりさんも自分をおもちゃにされた時は相手が楽しそうでも起こっていいんだからね」
いのりさん「はい…」
今回いのりさんに考え方が浸透した、2つ目のポイントは、『タイムリーに伝えた』ことです。
世の中には“後で怒った方がいい”場合と、“今怒った方が方がいい”場合があります。
“後で怒る”の代表的な例として『みんなの前で怒らないで、場所を変え一対一で怒る』です。
これは、怒っている方よりも怒られる方が強く感じるのではないでしょうか。
もちろん『みんなの前で怒る』には、一種の生贄的な感じに“その場にいる全員にルールを浸透させる”には効果的でしょう。
しかし、そのやり玉にあがった人は…ね。
では、なぜ今回は“今怒る”方が良かったのか。理由が3つあります。
- 怒り方を実際に見せることができる
⇒特に、怒り慣れていない人にとって『怒る』作業は大変なのは、あなたもよく分かることではないでしょうか。だから直接“やってみせる”のです。
⇒一口に『怒る』と言っても多様なやり方があるでしょう。怒鳴るのではなく『分かりやすい態度をして、しっかり自分がイヤだと思ったことを言葉にして伝える』ことを司さんは実践したのです。 - 怒った後『こんなヒドイ空気になってもいい』という、言葉では伝えられないことを伝えた
⇒気が弱かったり、自分を気持ちを押し殺すことになれている人は特に「仲が良かったのに、私が怒ったあと関係性が壊れたらどうしよう…」と考えてしまうのではないでしょうか。もちろんより良い環境作りには“その”考え方も大切です。しかし!司さんが伝えたいのは『自分自身の価値の境界線』の方法です。
⇒『おもちゃ』とは、他者の喜びのために存在する道具です。司さんは、いのりさんが『誰かを喜ばせるための道具』ではなく、自分の感情と権利を持った一人の人間であることを相手に伝える大切さを明確に教えるのです。 - 距離感や境界線の作り方と効果を直接見せることができる
⇒相手がどんなに善意や楽しさからであっても、自分の心身の領域を侵害されたと感じたときには、それを拒否し、「これ以上はイヤ」という境界線を引く権利があることを教えます。これは、他人との健全な関係を築く上で不可欠な能力です。
この1ページだけで、ここまで学ぶことができるのが『メダリスト』というマンガなのです!!
ね!自分の子どもに教えたくなりますよね!?
そして!実践できる子が結束いのりさんなのです!!

話の前段として…
年上の尊敬する先輩であるいるかさんに、いのりさんのトレードマークとも呼べる前髪を持って「変な髪型」と言われた時です。
これは、大好きなお姉ちゃんとおそろいでもある大切な髪型でもあるのです。
今までのいのりさんなら、ショックを受けながら引き下がっていたでしょう。
しかし!新生いのりさんは違います。
自分の頭の中にいるイマジナリー司さん(怒うらじ)が『自分をおもちゃにされた時は相手が楽しそうでも起こっていいんだからね!』と言われたことを思い出すのです。
だからこそ!ちゃんと「変って言われるの 私は嫌です!」と『分かりやすい態度をして、しっかり自分がイヤだと思ったことを言葉にして伝える』という司さんの教えを実践できたのです。
このキッカケのおかげで、いるかさんの中でいのりさんを「他の子とは違う」と認識させて、むしろもっと仲良くなるのです。
まさに、境界線をしっかり示したことで良好な人間関係の作り方を中学生であるいのりさんが学んだ瞬間なのです。
最後に
ちなみに、司さんの教育の原動力は、いのりさんの純粋無垢な成長を実際に目の前で見ることです。
私め、めちゃくちゃ同感でございます。
ではまた。
