こんにちは、サチヲです。
めちゃくちゃネタバレ有りです!!

私の好きな脚本家さんが絶賛していた脚本家さん。
それが…看護師として働きながら脚本を書き続け、2021年に 『第33回フジテレビヤングシナリオ大賞』 を受賞し、翌年 『silent』 で連続ドラマ脚本家デビューを飾った生方美久さんである。
初めて “生方美久ドラマ” を体験したのは2023年、フジテレビで放映された 『いちばんすきな花』 でした。

  • 気まずい空気感でさえも丁寧に体感させる “日常の間” を大切にする映像。
  • まるで歌の歌詞のような 『自分だけの言葉』 にしたくなるセリフの数々。
  • 各キャラクターに感情移入させるのは基本として、その湧き上がった感情を “気持ちよく転がされる” 感覚になる見事な構成。

今回の 『Tシャツが乾くまで』 も、それらが “あますことなく” 昇華されていて、 “もれなく” 最高のエンターテイメント作品に仕上がっていたのです。

【エンタメ】『Tシャツが乾くまで』 | 自分ですら理解していない “一面” が人に与える影響は、なんて不正確で頼りないモノなのに…こうも強力で揺るぎないものなのか。

ネットフリックスにて全話見れマス。

この前の日曜日、小学校1年生からのお友達の家庭に飲みに行ったとき…その奥さんから今まで聞いたことも見たこともない “彼の一面” を知らされました。
それは、私自身も仲が良かった “彼の両親像” すらも覆す内容でした。(あ。もちろん友達は酔っぱらって寝てる時です。)
なにせ友達の彼とは、任天堂のゲームウォッチ(1980年代)を持っている台数を私に “いちいち自慢してくるめちゃくちゃウザい奴” の時から一緒に行動していた(中学の頃、彼はゴリゴリのヤンキーだったので離れていましたが…)唯一の腐れ縁です。
そりゃ私がいちばん彼のことを知っているし、理解していると思っていたのに…43年経って “初めて知った一面” に動揺を隠せませんでした。

ただし。
よく考えたら “それ” は当たり前のことで、人は長く生きていけば増えてくる 『役割』 があり、その役割の数だけ 『人格』 という一面があると言っても過言ではないでしょう。

私の場合なら…
私の両親から見た 『子ども』 という役割。
友達から見た 『友達』 という役割。
仕事場の人から見た 『社員』 という役割。
妻から見た 『夫』 という役割。
離婚をしたのなら 『近くの他人』 という役割。
子ども達からみた 『お父さん』 という役割。

それぞれの役割は全て同一人物ではあるが、全て同じ一面ではないことは明白でしょう。
それぞれの役割に、それぞれ違う目的があるからこそ、それぞれ違う 『一面』 が存在する。
しかも時が経てば、それはどんどん変化していく。
よく 「人には裏と表があるよね」 と言うが…なんてことはない。
ただ多面体の一面を見ただけで、日本の裏側にブラジルがあるからって地球であることは変わりないのです。

今回でいうと、奇跡的に私のお友達の 『夫』 と 『子ども』 としての一面を知れました。
こればっかりは、彼と結婚して “妻” にならないと、知ることができない不可能な 『一面』 を垣間見ることが出来たのです。

…さて、いつも前置きが長くてすみません。
このドラマにおいても、登場人物たちがその人の 『一面』 を知るたびに、少しづつ変化したキャラクターが2人いるのです。

まだ行方不明中だった時の瀬尾充(松山ケンイチ)さんと、園田あずさ(夏帆)さんの2人(各登場人物に脳内再生された)です。

瀬尾咲子(蒼井優)さんは彼女として、充という 『彼氏』 の役割と、結婚してからは 『夫』 としての一面を知っている状態でした。
もっと言うと…そこらへんの 『友達』 や 『店長』 としての役割の一面を知っている人よりも、咲子さんはもっと深く知っている状態と言っていいでしょう。

だからこそ!
最初の頃、咲子さんの脳内で再生された充は “いい夫として言うであろう言葉” を話していました。
それは相思相愛で、揺るぎない信頼関係があるからこそ…咲子を勇気づける言葉をささやく…そんな力強い充像を持っていましたよね。

しかし、園田樹生(中島歩)さんに“不倫の疑い”をかけられたとき…咲子は初めて知った一面だからこそ、脳内で再生される充は重要なコトは途中で喋らなくなる。
だって…咲子さんはその一面を知らないし、信じていないから。
ただし一面を知れば知るほど…充の言動が変わっていく。

このように脚本家・生方美久さんは、見事なまでに美しいレトリックを活用し 『人間』 を表現してきたのです。
凄くないですか!?

特に、園田さんは妻であるあずささんの “それぞれの一面” を知るたびに、安心と不安がいったりきたりして、ちゃんと人に迷惑をかける。
こんなに美化されていない無垢な “男の子” という人間を演じている中島さんという役者をもっと好きになりました。
そして、その一面を良くも悪くも受け入れた時に “更新されたあずささん” が、脳内再生される。

ただ一言で 「その一面を受け入れる…」 と言っても簡単なコトではない。

『人に迷惑をかけない』 というモラルと 『どうせ言っても信じてもらえないこと』 という、いわゆる “優しい嘘” があるからより一層こじれる。
それは園田さんも咲子さんも “同じように” 苦悩する。
そのたびに、二人は険悪になるという不安定な関係でした。

ただね…生方美久さんは、その時によって二人の 『色々な役割』 を匂わしてくるんですよ。
時には 「不倫になっちゃうの?」 とか、 「あぁ、ただ境遇の似た友達か…」 だったり、最終的には 「園田さんは女友達かよ!」 という、当たり前のように私の予想をはるかに上回る 『役割』 を魅せてきました。

この二人の役割を不明確にし、更に変化を加えることにより、私のキャラクターに貼るレッテルを自由自在に操作してくるんですよね。
だから、話の続きが見たくなるなるのです。

伏線回収ではありませんが…まさか 『乾燥機のフィルター』 が咲子さん自体のレトリックになっているとはッ…!!!

今までは、ほこりが溜まったら掃除をする。
そして、乾燥機が正常に動く。
もちろん充からも 『フィルターの掃除の仕方』 の連絡が来る。

ドラマを見てて、充はちょっと “変わった人物” と思うくらい、ただ充の不思議さを表現しているアイテムかと思いきや…ですよ。
まさかフィルターが破れたことで、咲子の新たな一面が開花した様子を表現するなんて…そんなフィルターの使い方見たことありませんよ!

人生の味方がほしくて結婚する。

当たり前の話だが、それは毎日一緒に過ごすことになる。
けれど、咲子さんにとっての園田さん。充にとってのあずささんは “時々一緒にいる” のです。

この 『時々』 だからこそ、大切な人に言えないことを言える関係が、そこに成立する。
毎日だと…少し違う。
もちろん人によってその判断基準は違うのだろうけど、食べ物も好きな人も…そしてフィルターも一緒に同じように描く。

毎日ではなく、時々、フィルター掃除が必要だということ。

  • 一度フィルターを掃除すれば…しばらくは問題なく乾燥機として動く。、
  • 一度コインランドリーで、あずささんと話せば…充は “逃避すること” はなく、結婚生活を送れた。
  • 一度コインランドリーで、園田さん(咲子さん)と話せば…同じ境遇としてつらいけど、なんとか頑張って乗り越えることができた。

フィルターが汚れていたら普段出来ている乾燥(結婚生活・乗り越えること)も出来なくなる。
だから、たまに掃除(会話)が必要だった。
そう…好きな人フィルターにもね。

で! そのフィルターが破れた時…物語は大きく動き出す。
あんなにも胸につっかえていたモノが、すぅーっとなくなる。

そして、私に咲子の新しい一面を魅せる。
それは…今のところ視聴者しか知らない一面なのです。
それは視聴者に溜飲を下げてもらうとか、色々な意図がありますが…兎にも角にも! この怒涛のシナリオ展開…恐るべし生方美久さん。
本当におもしろかったでございます。

最後に

最終話で咲子さんが脳内再生する、あずささんとの会話といったら…なんて清々しい内容なのでしょう。
しかも外も晴れていてTシャツを乾かす必要もない状態で、 “いつものコインランドリー” で話す二人の表情といったらもう…本当の意味で晴れたのでしょうね。
ネットフリックスが見れる環境のあなた…是非、見て欲しいです。

というか、蒼井優さんの笑顔は本当に抜群の破壊力でしたね。
フラガールの頃と、なんの遜色もないのですよ。

あ。
実は私め、生方美久ドラマが好きだと言いつつ…初めて、やっと全話見ることができました。
他の生方作品も、ネットフリックスで放送してほしいです。
もちろん全部です。切実です。

ではまた。