©2022 Hiromu Arakawa/SQUARE ENIX
こんにちは、サチヲです。
がっつりとネタバレでございます。

荒川弘先生から生まれる 『黄泉のツガイ』 からは、少年誌のワクワクと青年誌の残酷さが醸し出され…結果! 唯一無二の物語に引き込まれるんです。
鋼の錬金術師という、もう生涯で二度と作れないであろう物語を紡いでおきながら、ココにきてコレですよ。
私の好きな姿勢の一つ 『現役度』 を維持継続しながらも、まだこんな余力があるなんて…。
クリエイティブ対する貪欲さを、否が応でも突きつけられる作品であることは間違いないです。

その最たるプロの技として…
セリフや状況説明といった設計図ともいうべき複雑なシナリオを、読者がページをめくって体験する 『物語』 に落とし込むころには複雑怪奇になりがちなところ、徹底してみやすく読みやすくなっているのです。

【マンガ】『黄泉のツガイ』 | プロの設計図 (シナリオ) を最高の体験 (物語) へ変換する職人技をもつ荒川先生。

©2022 Hiromu Arakawa/SQUARE ENIX

2周目を読んで初めて分かる登場人物の異様さ、怖さ、気持ち悪さ。
1周目ではこの “表情の違和感” は絶対に気が付かない。
しかし、色々なことを “知っている状態” で読むと…その不気味な空気感に 「なるほど…」と納得できるのです。

これについては 『描き分け』 が際立って最高なのは確かなのです。 が、そんな一言で片づけられません。
6~7巻くらいまで読んでやっと分かるからこその面白さと、作りこまれた根深い設定。
情報がない状態での緻密な物語の構成。
キャラクターの人間性の豊かさと、躍動感。
これらの前提があってこそ、あの巧みな 『描き分け』 が際立ち、物語に深みを与えているんですね。

設定だけを抜き出すとかなり複雑怪奇で緻密なシナリオなんです。

  • 左右一対の 『ツガイ』 という能力構造
  • 村の秘密、解読困難な血縁・伝承の謎
  • 多彩な勢力 (東村、影森家、その他のツガイ使い) の思惑
  • 登場人物それぞれの 『譲れない意思

並の作り手ならば、これだけの情報を整理して伝えるだけでも説明セリフが増え、展開が重くなり…結果! 読者が置いていかれます。

しかし! 荒川先生の手にかかると、それが “ページを繰る手が止まらない圧倒的な物語” へと変貌します
当たり前かもしれませんが…どんな些細なキャラクターにも 『なぜその行動をとるのか』 を含め、愛すべき人格と意思をこれでもかと詰めてくるんですよ。 荒川先生は。

こうしてまた、生きたレジェンドの作品を目の当たりにする幸せを享受できるんですね。

変な表現になりますが…シリアスとぬくもりがジェットコースターに乗せられているように “持っていかれる” んです。
んー。 なんかガツガツしていないんです。
落ち着いた大人のエンターテイメント作品なんです。

ゆっくり情報開示しながら上昇させておいて…急転直下する。
そして飽きさせないネタで横Gを感じさせながらも、使い古された展開だとしてもしっかり満足させる一回転の宙返りのコースも入れておく。
もう本当に、人を喜ばす鑑なんですよ。

最後に

©2022 Hiromu Arakawa/SQUARE ENIX

笑顔で…土足で…読者を奈落の底に突き落とす。
そして文字通り絵にかいたような奥の手。
最新刊 『黄泉のツガイ 13巻』 を読んでの感想でした。

ではまた。