/>【ハンターハンター】『スカシ』 | この技術を成立させる為には漢・冨樫は読者に「必ずやるッ!」と思わせないといけません。
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【ハンターハンター】『スカシ』 | この技術を成立させる為には漢・冨樫は読者に「必ずやるッ!」と思わせないといけません。

1巻からの振り返り熟読 ★HUNTER×HUNTER

(ハンターハンター ©冨樫義博/集英社)
こんにちは、サチヲです。

前回、『まぁまぁ…結果!2人は無事に窮地から逃れることが出来ました。そして、2人の絆と信頼関係は更に強く深く結ばれましたとさ。』と締めて終わりにしてしまいましたが、一つ!重要な『シーン』を忘れて飛ばしてしまいました。

それが『スカシ』という技術を使った冨樫のアンダーワールドを垣間見る美しくも大切なシーンです!
ちなみに『スカシ』とは、お笑い用語から引用させていただくと…同じオチを重ねてする『天丼』という技術があります。その天丼を繰り返し、“次も必ずやるでしょ”とお客様に思わせといて、天丼をやらないのが『スカシ』です。(スカシをする時は上手にオチをつけた言葉ではなく、いわゆる“普通のこと”を言った方が面白くなりますよね。)

今回の状況で『スカシ』を成立させるには、先ずは読者に『キルアとゴンはノブナガから逃げ切るんだ!』という事を必ず信じ込ませなければいけません。
その一つ目の階段としてノブナガに「壁!!を ぶち壊して逃げるとは」とハッキリと『逃げる』とセリフで言わせているのです
この事により、読者に『どうやって逃げるんだろう…』と記憶を植え付けることをします。
その後、5ページにも渡しり逃げるシーンを丁寧に描くのです。そして一つ目の『スカシ』をそっと入れてくるのです。

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【ハンターハンター】『スカシ』 | この技術を成立させる為には漢・冨樫は読者に「必ずやるッ!」と思わせないといけません。

(ハンターハンター ©冨樫義博/集英社)

ゴンの「キルア!!いるか!?」の後に続く言葉が…

  • ゴン「2人であいつ ぶっ倒すぞ!!」

よろしいでしょうか。
今まで4話分くらいかけて『旅団と戦っても勝てない。死ぬだけ』という実際のエピソードを積み重ねてきたのです。
なんでしたらキルアの回想で、シルバ曰く「絶対に旅団に手を出すな」とまで丁寧に積み重ねているのです。
まさに“どの旅団メンバーと戦っても勝てないし、最悪死ぬんだ”という天丼のエピソードを積み重ねた時に…あと一歩で逃げ切れる時なのに…『旅団メンバーであるノブナガと戦う』というスカシを冨樫はぶち込んできたのです。

これは当時読んでいた時「めちゃくちゃ胸アツ展開じゃん!」と思いましたよね。
なにせ「え、冨樫なら…キルア達がノブナガにワンチャンス勝てるシーン(ジンテーゼ的な)を描くのでは!?」と本気で思いましたから。
そもそもまともな戦闘シーンを描いていない状況も踏まえると「今回は主人公チームだし、相手はノブナガひとりだし…いけるかもしれん」とワクワクしたものです。

その「いけるかもしれん。」というか「あ。戦うんだな。」と確実に思わせたシーンがこちら

(ハンターハンター ©冨樫義博/集英社)

はい!これでノブナガのスイッチが入りましたよね。
前回までにある会話のシーンでは一切見せなかったセリフと絵のタッチ。ついでに『纏(テン)』をまとわせた禍々しいオーラを魅せることにより“本気で殺す”という説得力を上乗せするエピソードを入れてきました。
これが、いわゆる『戦うと思わせる一つ目の天丼』です。
更に、天丼を重ねます。

(ハンターハンター ©冨樫義博/集英社)

そうです。
ノブナガを一躍有名にしたこのコマによって、「あぁ…マジで戦うんだな」と思わせてくれたのです。
なにせ纏(テン)”と“錬(レン)”の高等応用技『円』のゴリゴリに真面目な説明シーンを投入してきたのですからね。
こんな天丼をされたらもう…「いったいどんな戦いが繰り広げられるのだろうか。もちろんゴンがおとりでノブナガの円に触れさせて、単発でしか攻撃できないとふんだキルアが足の1本くらい殺るのではないか…」という感じに、ドキドキとワクワクが止まるはずないじゃないですか!

それなのに。こんなにも楽しみにさせておいて…冨樫は最悪で最高の『スカシ』を描くのです。

やってくれました。冨樫は。
最初あれだけ逃げれないシーンを描いて、次に逃げるシーンを積み重ねて、次に戦うと思わせるシーンを描き…結果、戦わずに逃げるという『スカシ』で締める。
キルアの「バーーーカ」はノブナガに言っているのですが…完全に読者でもある私に言っていますよね(被害妄想)。

こんな素晴らしい『スカシ』のシーンを、前回のブログでたったの2行で終わらせてしまいました。

最後に

本当に冨樫の伝統芸能にやられっぱなしですよ。だから大好きなんですよ。
ではまた。